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LME49600を用いるLeijine A496シリーズの特徴と性能

A496plus type1のRightmark Audio Analyzer測定結果>>>

ヘッドフォンアンプ用バッファLME49600を使うには

A496シリーズは出力バッファにNationalSemiconductor社(現在はTexasInstument傘下.以下,NS社)のLME49600を用います.LME49600の謳い文句はTHD+N > 0.00003%, Voltage Noise Density > 3nV/√Hz>ですが,実際に回路に組み込んでこの性能を出すことは簡単ではありません.

まず電源が重要です.NS社の示すデータは電圧±15Vできわめて変動の低い良質の電源を用いて測定されたデータです.LME49600は少なくとも±10Vの良質の電源を用いないかぎり,本来の性能は発揮できません.

次は電源ラインのインピーダンス低減が必要です.データシートにはLME49600のできるだけ近くの正負電源ライン各々に5-10μFのタンタル電解コンデンサと0.01-01μFのセラミックスコンデンサを配するよう指示されています.これは周波数の高い領域でのLME49600の応答性を維持するのに必要です.

さらに必要なのは発熱対策です.LME49600がTO-263パッケージでしか提供されていない理由は発熱対策が必要だからです.発熱対策は基板にサーマルスプレッダを備えることですが,所定の面積が必要です.

少なくとも以上三つの条件を欠いた場合にはLME49600本来の能力を発揮させることはできません.Leijine/A496シリーズは,これら条件を十分に満たしたうえで,さらなる工夫を施しています.A496シリーズのまずこれら三つの点についての解説します.




LME49600のデータシート
ACアダプターとトランスの二つの電源

A496シリーズはACアダプターを電源とするtype1とセンタータップ付ダウントランスを電源とするtype2とがあります.

type1は電源にDC24V出力のACアダプタを用います.この出力からLPFで高周波成分を取り除いた後,低損失レギュレータで可聴域のリップルを低減させ,コンプリメンタルペアのトランジスタを使い仮想接地の両電源を作り出します.基板には±10Vが供給されます.

type2は電源にセンタータップ付トランス(AC100V入力時に16V〜18Vx2 0.2A以上出力)を電源とします.トランスからの出力をダイオードブリッジで全波整流し電解コンデンサで平滑化した後,正負の三端子レギュレータで基板に±15Vを供給します.

いずれの方式においても,最上流の電解コンデンサには基板に取り付ける仕様では最も大きいクラスの直径18mmのものを用いることができますから,電圧変動を低減させインピーダンスを低く保つことができます.
電源ラインのインピーダンス低減

A496シリーズはNS社のデータシートどおりにLME49600への正負電源ラインにセラミックコンデンサとタンタルコンデンサを並列に接続できるようになっています.右図に示す通り接続部はLME49600のすぐ近くです.

セラミックコンデンサ用にはの脚間隔5mm,7.6x3.8mmの取り付けスペースを用意しています.これはセラミックコンデンサだけでなく,フィルムコンデンサも取り付けられるための配慮です.

タンタルコンデンサを取り付ける箇所には脚間隔2.5mm,最大φ6.3mmのスペースを用意していますがより高性能で安全性の高い固体電解質コンデンサを取り付けることができます.


 

LME49600の発熱対策


NS社のデータシートにはLME49600が必要とするサーマルスプレッダ面積を算出する方法が詳しく記されています.


Exampleとして記されている計算の結果では必要とする面積は12平方インチ(約77cm2)にもなります.ただこれは,32Ωの負荷を±15Vのフルスイングで連続して駆動する場合(1.42W)ですから,通常の出力条件からは大きく外れます.

現実的には少々効率の悪いヘッドフォンを鳴らす場合でも,バッファの連続的な出力は0.05Wで計算すれば十分です.瞬間的に大きな出力があっても問題にはなりません.この条件で必要とするサーマルスプレッダ面積を算出すると約1平方インチ(約6.45cm2)です.

この面積を基板上に確保するため,A496は2個のメッキを施した貫通穴を用いた基板の裏側にまで広がるサーマルスプレッダを備えています.

 
A496シリーズ 独自の工夫

A496シリーズではLME49600を用いるための基本条件に加え,下記のような独自の工夫を施しています.

・増幅用オペアンプとDCサーボ用オペアンプを分離
・ポップアップノイズ抑制回路搭載

・電源ライン,信号ラインともに幅広のパターンで配線
・グラウンドループを徹底的に避けたベタアース
・高品質フィルムコンデンサを搭載できるレイアウト
・zobelネットワークとアイソレーターの設定可能
・LEDの電源供給回路,出入力にピンコネクタ採用可
 ボルトオンシャーシアース
 




増幅用オペアンプとDCサーボ用オペアンプを分離

データシートにはApplication Informationに Figure 4としてLME49600とLME49720と組み合わせるヘッドフォンアンプの回路の片チャンネル分が示されています.この回路が市販の多くのLME49600を用いるヘッドフォンアンプの回路の元になっています.

 Figure 4は2回路入りのLME49720の1回路で入力信号を増幅してLME49600に送り込み,もうひと回路を出力のオフセットを減らすDCサーボに用いるというものです.

この方式のメリットは,左右のチャンネルは電源部を除き完全に独立しているので何といってもクロストークの低減効果が顕著なことです.

他方デメリットはバイポーラ入力のオペアンプを用いた場合にDCサーボの効果が十分に得られないことです.LME49720は少ない方ですが場合によっては十数mVのオフセットを示します.

オペアンプの差し替えは左右チャンネル分2個を同時に交換する必要があります.交換可能なオペアンプはオフセットが少ないものしか選択できないうえに,左右でオフセットがずれることもあります.

Leijine/A496も2個のオペアンプを使いますが信号増幅用のオペアンプとDCサーボ用オペアンプという形で使います.ひとつの2回路入りオペアンプで左右のチャンネルの入力信号を増幅して左右のLME49600に送り込みます.DCサーボにはこれとは別の2回路入りオペアンプを用い,左右のチャンネルのオフセット低減を図ります.

Leijine方式のメリットはDCサーボ用に出力オフセットの小さいFET入力のオペアンプを使うことができるので,オフセットはほぼ0mVにすることができます.さらに1個のオペアンプを差し替えるだけで,アンプ全体のキャラクターを変えることができます.増幅用のオペアンプはオフセットを無視できます.

デメリットはクロストーク防止性能が不利になることです.しかしながら,不利になる程度はきわめて限定的です.というのも,普通のヘッドフォンは三極プラグを採用しているからです.

三極プラグである限り左右のチャンネルのヘッドフォンからグラウンドまでに共通インピーダンスが僅かながら存在します.このため左右チャンネルのアンプを独立させても原理的にクロストークはゼロになりません.

理想オペアンプを用いたシミュレーション(条件:ヘッドフォンのインピーダンス32Ω,プラグ・ジャックの接触部の抵抗1mΩ)を行うと,クロストークは-90dB程度になります.通常の2回路入りのオペアンプのChannel Separationは100dB以上ありますから,左右のチャンネルに別々のオペアンプを用いても,左右チャンネルの信号増幅とサーボにそれぞれ同じオペアンプを使っても,クロストークのレベルは変わらないことになります.  

 

ポップアップノイズ抑制回路搭載

アンプの電源を入れた瞬間にヘッドフォンから「ブツ」と聴こえるノイズがポップアップノイズです.発生原因はオペアンプにかかる電圧が動作電圧に達する過程で無用な出力が出るためです.電源を切るときにも同様の音がします.オペアンプの種類によって音の大小はありますが音はします.

これを防ぐ方法は電源ON時にはオペアンプにかかる電圧が安定してからアンプの出力をヘッドフォンジャックにつなぎ,電源OFF時には電圧が安定しているうちにジャックへの切る遅延リレーを回路内に組み込むことです.これは電源部とアンプ部とが一体になった基板でしかできません.

Leijine/A496シリーズは最初のバージョンでは,この回路を搭載せず,電源も別体にしていましたが,電源一体化とポップアップノイズ低減のお客様方のご要望があり,現行のtype1,type2はともに遅延リレー回路を搭載しています.

   
 
電源ライン,信号ラインともに幅広のパターンで配線

A496は電源ライン,信号ラインは,ともに幅広のパターン62mil(1.52mm)で配線しています.一般的には銅箔の厚さ35μmの時には1Aの電流を流す際の配線幅は1mmとされています.ヘッドフォンを鳴らす場合のバッファの瞬時最大出力電流が100mAにも達することがない点からすると過剰品質ともいえる幅ですが,配線のインピーダンスを低く保ち,さらに発熱を抑える上で効果があります.

グラウンドループを徹底的に避けたベタアース

アナログ回路でもっとも望ましいアースのとり方は一点アースですが,やや複雑な回路になると一点アースは取りにくくなります.このため多点アースを使用することになりますが,プリント基板で多点アースのインピーダンスを最も低くする手段がベタアースです.

ベタアースを採用する場合はグラウンドループを避ける必要があります.グラウンドループはその名のとおりグラウンドの配線がループ状になっているものいいます.ループ状になっている導体のループ内を通る磁界が変化すればループに電流が流れ,電圧を生じます.さらにループに電流が流れれば磁界を変動させます.これらの相互作用によって,グラウンドループはノイズを引き起こす要因になります.

このような不具合を防ぐため,A496ではどの電源ライン,信号ラインもグラウンドループに囲まれないよう,注意深くベタアースを設定しています.

高品質フィルムコンデンサを搭載できるレイアウト

Figure 4に示された回路図ではLME49720のパスコンおよびDCサーボの帰還ラインに挿入するコンデンサとして1μFのコンデンサが指定されています

496は0.1μFおよび1μFのコンデンサには,脚間隔5mm,それぞれ7.6x3.8mm,7.6x7.6mmの取り付けスペースを用意しています.これはセラミックコンデンサだけでなく,フィルムコンデンサも取り付けられるための配慮です

A496に
は,当社KITに採用のRoederstein(ERO) MKT 0.1uF,1uF/63Vをはじめ,WIMA MKS2 0.1uF,1uF/63V,ニッセイ MTF 0.1uF,1uF/50Vといったオーディオパーツとして定評のある高品質フィルムコンデンサを搭載できます.
zobelネットワークとアイソレーターの設定可能

アンプで最もありがちで恐るべきトラブルは発振です.発振はいわばアンプの暴走状態です.発振が生じると,最悪の場合,負荷(ヘッドフォン,スピーカー)には可聴域を遥かに超える高い周波数で電源電圧一杯の電圧がかかり続けます.たいへん危険な状態です.

A496は発振を起こさせないための対策を複数施しています.

右の2つのグラフはLME49600のデータシートから抜き出したもので,それぞれ,増幅率の周波数依存性,位相の周波数依存性です.

理論上,アンプは位相が180°以上遅れた高周波域で増幅率が零より大きいとき発振します.上の右側のグラフが位相を示しています.最小値が−50°で切れているので正確には言えませんが,グラフ曲線の降下の具合からすると100MHzを少し越えたあたりで−180°に達しそうです.このときの増幅率を左側のグラフで見ると,ちょうど山ができている辺りに相当し増幅率は2倍(6dB)以上にもなっています.

LME49600をオペアンプのフィードバックループ内に入れてオペアンプにユニティゲイン安定なものを用いると,いきなり発振が生じる可能性は低いです.しかしながらオペアンプが安定条件を十分に満たしていないような場合やヘッドフォンや接続ケーブルの静電負荷が大きい場合には発振が生じやすくなります.

ヘッドフォンケーブルの静電容量は数100pFから場合によっては1000pFにまで及びます.ヘッドフォンアンプは,この静電容量も負荷として駆動しなくてはなりませんが,これは容易にアンプ発振の原因になります.

A496では発振対策として,まず,Zobelネットワークの設定を可能にしています.Zobelネットワークは高周波域におけるインピーダンスを引き下げる効果があります.右図で言うとRLを引き下げる効果があり,結果的には高周波域の増幅率の山をなくすことができます.

次にLR(コイル・抵抗)構成によるアイソレータ回路の設定も可能にしてます.Zobelネットワークはアンプ側から見たときの負荷の周波数依存性をフラットにし,アイソレータ回路は周波数が高い領域でアンプと負荷を分離し容量性負荷による発振を防止する効果があります.

Zobelネットワークとアイソレータの設定については,Tipsにて解説してます

さらに帰還抵抗と並列に小容量のコンデンサの設定を可能にしています.このコンデンサは,高周波域における帰還量を増加させることで高周波域の増幅率を引き下げるとともに,位相を進める効果があります.さらに電圧増幅を行うオペアンプからの出力を小容量コンデンサを介して帰還回路へ接続できるようにしています. 







 
   
出入力にピンコネクタ採用可
ボルトオンシャーシアース LEDの電源供給回路

基板の性能にかかわる話ではありませんが,配慮している点を3点解説します.

基板への入出力および電源の配線を容易にするため,これらの接続についてはピン間隔2.5mmのコネクタを取り付けられるようにしています.

基板をシャーシ(ケース)に取り付けるφ3.5mmの穴のひとつの周囲に,基板のアースと電気的につながる金属部を露出させています.金属製のボルトナットでこの穴を使って基板を固定すれば,基板は特別な配線をせずに,シャーシにアースを落とすことができます.

基板に電圧が供給されていることを示すLED点灯のための出力部とLEDの電流制限抵抗の取り付け部を基板上に設定しています.